信州最古の温泉地として親しまれる別所温泉。「信州の鎌倉」とも称されるこの美しく歴史ある塩田平エリアにおいて、ひときわ厳かで深い歴史を湛えているのが曹洞宗の古刹「安楽寺(あんらくじ)」です。木々に囲まれた静寂な境内の奥、山肌に寄り添うように佇む「八角三重塔」は、日本に唯一現存する極めて貴重な木造の八角塔であり、長野県内最古の国宝建造物でもあります。安楽寺の創建の歴史、八角三重塔をはじめとする絶対に見逃せない見どころ、アクセスや駐車場情報まで徹底的に解説します!歴史好きや静かな境内散策を楽しみたい方に心からおすすめのスポットです。
安楽寺の案内図
案内図
安楽寺の境内案内図(イメージ図)です。黒門から杉並木の参道、風格ある山門、側面の石畳と続く伽藍配置が美しく調和しています。本堂の裏手の山腹に、国宝の八角三重塔や重要文化財を安置する伝法堂、鐘楼などが佇んでいます。お参りの前に位置関係を把握しておきましょう。
鳥瞰図
バーチャル空撮
安楽寺の歴史と概要
安楽寺の歴史は極めて古く、伝承では平安時代の天長年間(824〜834年)に比叡山延暦寺の座主である慈覚大師円仁によって開創されたと伝えられます。あるいは天平年間(729〜749年)の創建とする説もあります。当初は天台宗の寺院でしたが、鎌倉時代中期に大きな転換期を迎えました。
鎌倉時代、信州塩田荘を治めた塩田北条氏の庇護を受け、中国(宋)で学んだ高僧・樵谷惟仙(しょうこくいせん)を招いて禅宗(臨済宗)寺院として中興されました。これにより、安楽寺は信州における禅宗と学問の一大中心地として大いに栄え、多くの学僧が集まったと伝えられています。室町時代以降は北条氏の滅亡とともに一時衰退したものの、天正16年(1588年)頃に曹洞宗の高山順京によって曹洞宗へと改宗・再興され、現代に至るまでその法灯を守り続けています。
安楽寺の見どころ
安楽寺の見どころは、何と言っても国宝の八角三重塔ですが、黒門から本堂へと続く参道の静けさや、山門の伝統美、歴史的な重要文化財など、境内全体に見逃せない魅力が溢れています。写真とともに歩くように解説します。
風格漂う黒門と静寂に包まれた杉並木の参道
別所温泉街の細い通りから安楽寺へと足を踏み入れると、まず迎えてくれるのが味わい深い木造の「黒門」です。黒門には安楽寺の山号である「崇福山(そうふくざん)」と刻まれた金文字の美しい木製扁額が掲げられています。この門をくぐると、目の前には空を突くような太い杉の巨木が立ち並ぶ、静寂に満ちた上り坂の参道が伸びています。木漏れ日が差し込む美しい石段を一段ずつ上るごとに、身も心も浄化されていくような厳かな心地になります。
格式高い佇まいを見せる山門と本堂
参道の長い石段を上りきった場所に凛と聳えるのが「山門」です。重厚な茅葺または銅板葺きの屋根を支える軒下の組物は、釘を一切使わずに複雑に噛み合わされた宮大工伝統の工芸技術が凝縮されており、長い歳月と多くの参拝者の祈りを刻んだ千社札がびっしりと貼られています。山門の扉を抜けると、綺麗に整備された石畳が奥へまっすぐ伸び、特徴的な大きな屋根を持つ「本堂」が現れます。本堂の正面には「安楽禅寺」の風格ある黒地金文字の扁額が掲げられ、禅寺らしい簡素ながらも美しい空気が満ちています。
日本唯一の木造八角三重塔(国宝)とその緻密な建築美
本堂の左手裏側、拝観受付を通って山腹の鬱蒼とした杉林の中を進むと、石垣の上に安楽寺の象徴である国宝「八角三重塔」が姿を現します。鎌倉時代末期(13世紀末〜14世紀初頭)に建立されたと推定されるこの塔は、日本に現存する唯一の八角形の三重塔であり、長野県で最も早く国宝に指定された極めて貴重な建造物です。中国の宋から伝わった「禅宗様(唐様)」建築の最高峰とされ、柱と柱の間にも細かく組まれた「詰組(つめぐみ)」と呼ばれる軒下の木組みが幾重にも屋根を支え、波打つように反り返った八角形のひさしが完璧な対称美を描いています。秋には、紅葉したカエデやミズナラが塔を取り囲み、重厚な木肌と赤や黄色のコントラストが息をのむような絶景を作り出します。
八角三重塔の初重内部と釈迦如来像
八角三重塔は外観の美しさもさることながら、その「初重(1階)」内部にも神聖な空間が広がっています。塔の初重の正面扉を開けると、そこには金色の美しい装飾が施された須弥壇が設けられており、本尊である「釈迦如来坐像」が静かに安置され、長い歴史の中で守られてきた厳かな仏教空間 of 姿を見ることができます。
重要文化財を安置する伝法堂と開山・樵谷惟仙和尚坐像
三重塔のすぐ近くの山肌に建つ白壁の小さなお堂は「伝法堂(経蔵)」です。この内部には、国指定の重要文化財である安楽寺の開山「樵谷惟仙和尚坐像」と、第二世「幼牛恵仁和尚坐像」が安置されています。どちらも鎌倉時代から室町時代初期の木造彫刻であり、写実的で高い芸術性を備えています。厨子の前に祀られた高僧たちの姿からは、宋で禅の神髄を学び、この信州の地に伝えた当時の強い信念と、禅宗寺院としての威厳がひしひしと伝わってきます。
黒板張りの袴腰が特徴的な重厚な鐘楼
境内にはもう一つ、目を惹く伝統建築があります。それが下部が黒い板張りで末広がりの形をした「袴腰(はかまごし)」を持つ「鐘楼」です。上部の立派な木組みと袴腰のどっしりとしたデザインが美しく調和し、境内を包む厳粛な空気をさらに引き締めるアクセントとなっています。
境内の風情と秋の紅葉美
山古い境内ならではの四季折々の自然も見逃せません。秋の深まりとともに境内の木々は美しく化粧をし、池や手水鉢の水面に散り積もる無数の真っ赤な紅葉の落ち葉は、安楽寺の「わびさび」の美しさを静かに表現する隠れたアートとなっています。
安楽寺の詳細アクセス、駐車場情報
【公共交通機関でのアクセス】
・北陸新幹線「上田駅」から上田電鉄別所線に乗り換え、終点の「別所温泉駅」で下車。駅からは別所温泉ののどかな温泉街を散策しながら、徒歩約10分(約800m)で安楽寺の参道黒門に到着します。ローカル列車での旅情を楽しみながらのアクセスも非常におすすめです。
【車でのアクセス】
・上信越自動車道「上田菅平IC」から一般道で別所温泉・塩田平方面へ約30分(約15km)。または「坂城IC」から約35分です。温泉街周辺は一部道幅が狭くなっているため、対向車や歩行者に十分注意して運転してください。
【駐車場情報】
・安楽寺の参道入口のすぐ近くに、普通車約10台が駐車可能な無料専用駐車場が用意されています。満車時の代替案として、すぐ近くにある別所温泉街の共同駐車場や、北向観音下にある有料駐車場(1回500円程度)を利用し、温泉街全体をのんびり散策するルートを取ることもお勧めします。
まとめ
長野県上田市の別所温泉に佇む「安楽寺」は、日本唯一の木造「八角三重塔(国宝)」を筆頭に、鎌倉時代の禅の香りと宮大工の優れた技、および杉林に囲まれた静寂な「わびさび」の世界を堪能できる最高のパワースポットです。杉並木の参道を歩き、国宝塔を目の前にした瞬間の静かな感動は、旅の素晴らしい思い出になるはずです。別所温泉の中心にある「北向観音」とも徒歩10分ほどの距離ですので、現世と来世の両方の幸せを祈る「両参り」を兼ねて、温泉街散策とセットでぜひ安楽寺へお出かけください!